MLVの核形成・成長
例えば水が凍る,塩が結晶化する際に見られるように,核形成・成長は (秩序) 構造形成のもっとも基本的な物理過程の一つである.それにもかかわらず,単位構造 (原子,分子) スケールの微小な現象であり,かつ本質的に非平衡・動的な過程であるため,その詳細には不明な点が多く残されている.ここで我々はリオトロピック液晶におけるラメラ相 (1次元秩序相) の核形成・成長に注目して研究を行った.その結果,その成長過程において,通常の固体結晶の成長などでは見られない独特の段階的成長を発見した: 等方相からラメラ相が核形成する際,ラメラの層は平らであり,核の形状は 「レンズ」 状である.しかしその後成長しある大きさを超えた時,ラメラの層は軸対称に曲がり始め,最後には層が同心球殻状の構造を持つ,「オニオン」 と呼ばれる構造に移行する.この自発的変形の起源は,ラメラの曲げ弾性エネルギーと核の界面エネルギーの競合であると考えている.この成長過程における異なる構造への変化は通常の固体結晶形成では起こり得ないものであり,ソフトマターにしばしば存在する低次元秩序相に特有の現象であると考えている.またオニオン構造そのものも微小構造としての応用が注目されており,その形成機構の一つを解明した研究としても大きな意義がある.
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