コロイド・液晶複合系
コロイドなどの微粒子をネマティック液晶に添加すると,粒子表面に対するアンカリング効果で分散媒の液晶配向場が歪められ,粒子は配向欠陥を伴う.一粒子の場合でも,液晶中の粒子の運動は,弾性場と流れ場の動的結合により単純液体に分散した場合とは異なったものとなる.多粒子系の場合には,歪められた液晶弾性場を介して粒子間に実効的な相互作用が生じる.我々は流体粒子ダイナミクス法を用いて,このようなコロイド・液晶複合系における粒子運動,凝集ダイナミクスを調べた.液晶が粒子に対し垂直に配向する場合,Saturn-ring 型の配向欠陥を形成する.これに外力を与え粒子の移動度に関する研究を行った.外力が小さい場合には配向欠陥は粒子の運動に追従するが,強くなると追従することができなくなり,最終的には配向欠陥は消失することが分った.さらに,Saturn-ring 型の配向欠陥に垂直に外力を加えた場合,外力と粒子運動が平行ではなくなり,その程度はアンカリング強度に依存する.これはアンカリング強度による新しい粒子分別法の可能性を示している.また,多粒子系においては配向欠陥を異なる粒子が共有することによるポテンシャルなどでは記述できない新しいタイプの相互作用を見出した.
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