2次元動的赤外分光法
一般的な緩和測定は巨視的な挙動の測定,すなわち,系に外場を加え系が示す応答 (外場の熱力学的共役量) を測定するものであり,分子レベルのダイナミクスについて知見を得ることができる.しかしながら,巨視的な測定結果は分子レベルのダイナミクスを集合として捉えたもので,微視的レベルのダイナミクスの理解に直接つながるわけではない.そこで,我々は周波数領域で緩和測定可能な動的赤外分光装置を開発した.この手法は外場の熱力学的共役量を測定するのではなく,外場に応答する分子の挙動を直接測定する点に特徴がある.そのためのプローブとして赤外活性な官能基を利用する.この手法はソフトマターのような内部自由度の大きい系に特にその特徴が発揮される.例えば,側鎖型高分子液晶の場合,液晶側鎖は配向状態をとろうとする一方で主鎖の一次元連結性により配向過程は制限を受けることになる.このような系では電場配向緩和現象を測定する場合,液晶側鎖は電場に直接応答するが,主鎖は電場に応答しない.その結果,主鎖の運動は側鎖の運動によって駆動される.主鎖に属する吸光度ピークと側鎖のものが異なる緩和挙動を持つならば,我々の手法によってそれを測定することが可能である.このように,外場変調多次元分光により,マクロな緩和と個別の局所的な分子運動をつなぐことが可能になると期待される.
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